【薬剤師必見】がん薬物療法認定薬剤師認定までの道すじ

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日々病院薬剤師として働いていると様々な領域の疾患を学ぶ機会があり、より専門性が求められてきていると感じます。

近年では専門領域に特化した薬剤師を育成するため、様々な学会や団体の認定・専門薬剤師制度が設けられています。

今回はその中でも日本病院薬剤師会の認定制度である『がん薬物療法認定薬剤師』の取得までの道すじについて自身の経験をもとに紹介していきたいと思います。

がん領域についてもっと深く学びたい、専門性を高めて患者様へ貢献したいと考えている方への足掛かりになれば幸いです。

初めに

少しだけ自己紹介をします。

私は令和5年度にがん薬物療法認定薬剤師の認定を受けました。

直属の上司ががん薬物療法認定薬剤師取得者であり、取得を勧められたことがきっかけです。

最初の認定に対する私のイメージは「とても自分には無理、優秀な薬剤師がなるもので敷居が高い」であり、正直目指すのも恐れ多いような感情がありました。

しかし抗がん剤治療が施行されている患者様が比較的多い病院にもかかわらず、がん薬物療法認定薬剤師取得者が一人だけだったこともあり、所属長にも励まされながら目指すに至りました。

結果取得して本当に良かったと思える資格だと日々感じています。

この記事では私自身の経験を交えながら、がん薬物療法認定薬剤師取得への全体像を紹介します。

認定取得によるメリット

がん薬物療法認定薬剤師を取得することで得られるメリットをいくつかご紹介します。

がん薬物療法体制充実加算の算定が可能

2024年診療報酬改定より『がん薬物療法体制充実加算』(月1回に限り100点)が追加されました。

以下は薬剤師に関する施設基準・算定要件の抜粋です。

【施設基準】

  • 化学療法に係る調剤経験5年以上で、40時間以上のがんに係る適切な研修を修了し、がん患者に対する薬剤管理指導の実績を50症例(複数のがん種であることが望ましい。)以上を有する専任の常勤薬剤師を配置
  • 薬剤師が、医師の診察前に患者から服薬状況、副作用等の情報収集・評価を実施し、情報提供や処方提案等を行った上で、医師がそれを踏まえて、より適切な診療方針を立てられる体制を整備する

【算定要件】

  • 外来腫瘍化学療法診療料1の「イ」の(1)を算定する患者に対して、以下の業務について医師の指示を受けた薬剤師が「医師の診察前に服薬状況、副作用の有無等の情報を患者から直接収集し、評価を行った上で、当該医師に当該患者に係る情報提供、処方提案等を行う場合に、月1回に限り100点を加算する(以下省略)

施設基準の薬剤師の配置要件はがん薬物療法認定薬剤師の申請資格が意識されたものとなっています。(申請資格については後述します)

つまりがん薬物療法認定薬剤師の取得薬剤師が算定できる点数があるということです。

これによりがん薬物療法認定薬剤師の必要性・需要が格段に向上したと感じます。他の薬剤師では算定できない点数を取れることは転職などの際にも有利になると思われます。

医師に自信を持った提案ができるようになる

抗がん剤治療を行う上では副作用マネジメントやレジメン管理、多職種との連携が欠かせません。特に副作用フォロー時には医師へ直接提案を持ち掛ける場合も多いと思います。

提案時には自分の武器である『知識』を持っていないとふわふわとした提案になってしまいます。

がん薬物療法認定薬剤師の取得を目指すと医学文献やガイドライン、医薬品の適正使用ガイドを徹底的に読み漁ることになるので武器である『知識』が自然に身につきます。

結果エビデンスのある提案ができるようになるので、日々の業務においても改めて調べ物をする機会が少なくなり、業務をスムーズに行えるようになります。

症例や学会発表時の文章力が身につく

後述しますが、がん薬物療法認定薬剤師の取得には介入症例の提出が要件となっています。

症例記述の際には誤字脱字や参考文献の記載方法など注意しなければならない点があるため、ライティング力も磨かれます。

病院薬剤師をしていると認定薬剤師か否かにかかわらず、他人にわかりやすい正しい記述の仕方が求められる機会が必ずあるので、そのようなシーンにも役立つスキルが身につきます。

がん薬物療法認定薬剤師の申請資格

以下の枠内にがん薬物療法認定薬剤師の申請資格を記載しています。

様々資格条件が設けられていますが特に重要な点をいくつかピックアップして見て行きましょう。

  1. 日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた見識を備えていること。
  2. 薬剤師としての実務経験を3年以上有し、日本病院薬剤師会の会員であること。ただし、別に定める団体のいずれかの会員であればこれを満たす。
  3. 別に定める学会のいずれかの会員であること。
  4. 日病薬病院薬学認定薬剤師であること。ただし、日本医療薬学会の専門薬剤師制度により認定された専門薬剤師であればこれを満たす。
  5. 申請時において、病院または診療所に勤務し、がん薬物療法に3年以上、かつ、申請時に引き続いて1年以上従事していること(所属長の証明が必要)。
  6. 日本病院薬剤師会が認定する研修施設(以下「研修施設」という。)において日本病院薬剤師会が別に定める実施要綱・コアカリキュラムに基づく実技研修を履修していること、または、研修施設において3年以上、がん薬物療法に従事していること(所属長の証明が必要)。
  7. 日本病院薬剤師会が認定するがん領域の講習会、及び別に定める学会が主催するがん領域の講習会などを所定の単位(40時間、20単位以上)履修していること。ただし、40時間のうち日本病院薬剤師会主催のがん専門薬剤師に関する講習会12時間、6単位以上を取得すること。
  8. がん患者への薬剤管理指導の実績50症例以上(複数の癌種)を満たしていること。
  9. 病院長あるいは施設長等の推薦があること。
  10. 日本病院薬剤師会が行うがん薬物療法認定薬剤師認定試験に合格していること。

2と5に記載があるように病院薬剤師として3年以上働いていることが前提条件になります。入職してから最短で資格習得を目指しても3年はかかるということです。

4に記載の日本病院薬学認定薬剤師は日本病院薬剤師会が認定する基礎となる資格です。がん薬物療法認定薬剤師の取得を目指す際には並行して日本病院薬学認定薬剤師の資格取得も済ませましょう。日本病院薬学認定薬剤師の取得には一定の研修単位の取得と認定試験(WEB)の合格が条件になります。

6に記載の研修に関しては日本病院薬剤師会が認定する研修施設において3ヶ月程度の実技研修が必要となります。ただし自身の職場が日本病院薬剤師会が認定する研修施設で3年以上従事している場合はこの条件は満たされることになりますので、所属長に確認してみましょう。

7、8、10の記載についてはテーマに分けて後述していきます。

40時間以上のがん専門領域講習の受講

日本病院薬剤師会の認定単位とは異なり、がん専門領域の単位として申請に使用する場合は120分の講習につき 1単位となります。日本病院薬剤師会の認定単位との換算が微妙にややこしいので注意しましょう。

また日本病院薬学認定薬剤師の申請・更新のためにも日本病院薬剤師会の認定単位が必要になりますので、がん専門領域に使用する分の単位も気にかけながら講習を受けるようにしましょう。

50症例の介入実績・25症例の提出

実績50症例以上と上記申請資格に記載がありますが、申請時に実際に提出する症例は『厳選した25症例』です。日本病院薬剤師会HPにあげられている別紙にも症例提出に関する記載があるため上記申請資格以外の書類も隅々までチェックするように心がけましょう。

症例を記載する際には年度ごとに要約(決まりごと)が更新されている可能性が高いため、こちらも必ず確認しましょう。

誤字脱字が多いと不合格とされてしまうため、一通り書き終えたら必ず他の薬剤師にチェックしてもらうことをオススメします。

がん薬物療法認定薬剤師認定試験

がん薬物療法認定薬剤師申請には年一回開催されるがん薬物療法認定薬剤師認定試験に合格していることが申請資格条件となります。

試験は殺細胞性抗癌薬はもちろんのこと、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬まで幅広い薬剤に関する問題が出題されます。私が受験したとき、個々の薬剤の適切な投与時間や前投薬の有無、代表的な副作用症状が多く出題されました。さらに症例検討方式の問題も出題されたため、副作用マネジメント方法やレジメン施行時の注意点(フォローすべき点)などの知識が必要となります。

私は『がん専門薬剤師集中講座』の講義内容を中心に復習し、その上で各薬剤の添付文書を読み込むことで試験に臨みました。他に使用したテキストなどは後ほど別記事にて紹介しようと思います。

まとめ

申請資格の項目だけでも10項目あり、申請する時には正確に要項を読み解くことが大切です。なかなか一度に把握することは難しいので優先順位をつけながら申請資格を満たしていきましょう。

様々な疾患の中でも特にがん領域は年々新しい薬剤が保険適応となったり、既存の薬品の適応が広がり続けているため随時知識のアップデートが必要な分野です。

診療報酬の改定にも後押しされるような形で、今後ますますがん薬物療法認定薬剤師の活動の場が増えてくると思われます。

この記事が一人でも多くのがん薬物療法認定薬剤師を目指す方への足掛かりになれば幸いです。

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